講師:中里 英樹(甲南大学文学部教授)
このワークショップの講師をつとめます、甲南大学の中里英樹と申します。どのような研究バックグラウンドを持っているかを知っていただくと、動画での説明を聞いたり、フォーラムや個別セッションでの質問を考えるさいに、役立つかと思いますので、少し詳しい自己紹介をさせていただきます。
甲南大学文学部社会学科の教員をしておりますが、NVivo Platinum Trainerとして、学外の研究者の方々にむけたワークショップをしてきました。
1. 専攻と研究テーマ
専門は家族社会学。研究テーマは子育て期の仕事と家族。オーストラリアでの在外研究や育児休業に関する国際研究ネットワークのメンバーとしての活動を活かして、育児休業制度を中心に仕事と家族に関する制度の比較や、育児休業を取得した父親の実態調査などを進めています(日本とドイツ、スウェーデン、オーストラリアなど)。
2. これまで用いてきた主な研究方法
- 戦前の修身教科書や講演録の言説分析
- 宗門改帳データベースを用いた歴史人口学的家族研究(リレーショナル・データベースの活用とSTATAを用いた統計分析)
- 現代の大規模サンプルによる質問紙調査データ(パネルデータを含む)を用いた統計分析(STATAを用いた多項ロジット分析やイベントヒストリー分析など)
- 質問紙調査の自由記述の分析
- インタビューデータを用いた質的研究
3. NVivoの利用経験
2007年 オーストラリアでの在外研究中に周りの研究者(労働社会学者など)が、インタビューやフォーカスグループの分析に使っていたことでNVivoを知る。
帰国後、2008年に自身で購入し、使い始めました。
4. 自分自身のNVivoの利用例
中里 英樹,2023,『男性育休の社会学』さいはて社.
こちらの本には、以下のものを含む多様なデータの分析結果が用いられています。
4.1 インタビューの整理と分析
Nakazato, H. 2016. Fathers on Leave Alone in Japan: The Lived Experiences of the PioneersComparative Perspectives on Work-Life Balance and Gender Equality: Fathers on Leave Alone, Springer
オープンアクセス(無料でダウンロードできます)
http://link.springer.com/chapter/10.1007/978-3-319-42970-0_13
前田 正子・中里 英樹,2022,「出産後の女性のキャリア継続の諸要因 : 女性の就労環境,「保活」,夫の家事育児に注目して」『心の危機と臨床の知』23:23-46.
https://konan-u.repo.nii.ac.jp/records/4145
4.2 質問紙調査の自由記述
日本社会学会データベース委員会, 2015,「社会学の研究・教育における文献データベースの利用についてのアンケート 結果の概要」(ウェブからダウンロード可)
http://www.gakkai.ne.jp/jss/2015/05/22093409.php
4.3 言説分析
【育児書など】
Nakazato, Hideki. 2018. “Chapter 9: Culture, Policies and Practices on Fathers’ Work and Childcare in Japan: A New Departure from Old Persistence?” Pp. 235-55 in Fathers, Childcare and Work, edited by R. Musumeci and A. Santero. Bingley, United Kingdom: Emerald Publishing.
【新聞記事、国会・審議会議事録など)】
Nakazato, Hideki. 2019. Japan: leave policy and attempts to increase fathers’ take-up in PARENTAL LEAVE AND BEYOND: Recent developments, current issues, future directions Edited by Peter Moss, Ann-Zofie Duvander and Alison Koslowski
Windwehr, Jana, Ann-Zofie Duvander, Anne Lise Ellingsæter, Guðný Björk Eydal, Živa Humer, and Hideki Nakazato. 2021. “The Nordic Model of Father Quotas in Leave Policies: A Case of Policy Transfer?” Social Politics: International Studies in Gender, State & Society.
https://academic.oup.com/sp/advance-article-abstract/doi/10.1093/sp/jxaa041/6128479
日本に関する部分で国会議事録の分析に使っています
Nakazato, Hideki, 2023, “Has ‘Nordic Turn’ in Japan Crystalized?: Politics of Promoting Parental Leave Take-up among Fathers and the Divergence from the Nordic System,” Journal of Family Studies: 1-16.
https://doi.org/10.1080/13229400.2023.2179533
中里 英樹 ,2023,「日本における「近代家族論」の展開と社会へのインパクト: 新聞の子育て言説を中心に」, 平井, 晶子・中島 満大・中里 英樹 ・森本 一彦・落合 恵美子編, 『〈わたし〉から始まる社会学: 家族とジェンダーから歴史、そして世界へ 』有斐閣: 60-78.
4.4 先行研究のレビュー
こちらの文献では複数年にわたって発行された報告書の情報の整理にNVivoを使いました。
中里 英樹,2019,「International Network on Leave Policies and Researchを通してみる育児休業研究の動向と国際共同研究のありかた」『家族社会学研究 = Japanese journal of family sociology』31(1):78-85.
https://doi.org/10.4234/jjoffamilysociology.31.78
また、最近の大半の論文等の執筆過程で、先行研究のレビューにNVivoを活用しています。