従業員のレジリエンスを高めるリーダーの動機をMAXQDA 2018で分析
MAXQDA Research Blog 翻訳版
Guest post by Maximilian Sprößig(May 27, 2019)
急速に変化し続ける職場において、従業員は日々新たな業務要求にさらされています。これらの変化には例えば、私たちの社会がサービス経済化することや、職場におけるIT化、生産やサービス、コミュニケーションプロセスの増加や、これまで経験したことのない仕事などが含まれます。こうした変化は仕事関連ストレスを強め、時に職務上またはプライベートでの危機にさえもつながることがあります。人はどのようにこうした問題に対処し、レジリエンス(回復力・復元力)に行きつくのでしょうか。抑うつや燃え尽き(悲しいことですが一般に仕事関連のストレスから発症します)に至ることを防ぎ従業員のレジリエンスを高めることは、彼らがストレスやその他仕事上の問題に対処する方法の一つです。
労働関連の規制が増え、職場におけるヘルス・プロモーションはコンセプトであると同時に、健康リソースを強化するための施策をも意味するようになりました。心理的資本を蓄積し、労働者が自分を守るための手段としてのレジリエンス向上に投資することは望ましい考えと言えます。回復力のある従業員は危機的な状況においても比較的感情が安定し、新しい経験に対して前向きで、変化に直面しても柔軟に対処でき、そしてストレスの強い環境でも高い成果を上げられるようになります。
研究を通じ、企業や組織にけるリーダーシップと彼らの職場環境への影響が、レジリエンスを支援し育成できると推定されています。一方リーダーたちは、この成果が約束されておらず(少なくとも短・中期的には)、しかも測定が困難な事柄に対しどのような動機付けで取り組むのでしょうか?
リーダーたちがこの取り組みにどの程度やる気を持っているのかを調べるため、レジリエンスに関し自然と知識や経験を持っている人事部門を主とし、さまざまな業界に属する9名にインタビューしました。
MAXQDAでインタビューの音声データを書き起こす
MAXQDAに出会うまでの間、書き起こしには常に複数のソフトウェア、一つは音声の再生と、少なくとももう一つテキストをタイプするためのものを使わなくてはなりませんでした。でももうその必要はありません。MAXQDAさえあればこれら全てを一か所で行えることがわかったからです。
収集したデータを書き起こすには、最初にMAXQDAにデータをインポートします。MAXQDAの[インポート]タブには、異なるタイプのデータを読み込むための多くの機能が提供されています。新規プロジェクトを作成するとタブが自動的に開きますので、単にMAXQDAにインポートしたい選択肢を選ぶだけで、MAXQDAの[文書システム]ウィンドウにデータが読み込まれます。
データをインポートした後、そのファイルの上で右クリックし[音声ファイルを書き起こす]を選択。以下の画面で示すようにMAXQDAの[マルチメディアブラウザ]が起動し、書き起こしプロセスを最大限効率化するさまざまなオプションが開きます(図1)。
図1:MAXQDAによるインタビューの書き起こし
F5キーでの簡単に一時停止/再生が操作できたり、Enterキーで[話者の自動切り換え]ができたり、入力したテキストを確認するための巻き戻しなど-これらすべての機能が、書き起こしの効率を向上させてくれます。書き起こしを終えたら[×]をクリックし書き起こしモードを終了、すぐに分析ステージを開始できます。MAXQDAに出会う以前、私が研究のため行った書き起こし作業には概ね10倍くらいの時間がかかっていました。
インタビューのパラフレーズ
クリックで書き起こしを開くことができます。もしテキストを再確認したければ、左側のタイムスタンプから、音声データの対応する箇所にジャンプできます。
研究目的のためには、従業員のレジリエンスを高めることに対するリーダーの動機付けに関する情報が必要です。そこで私の次のステップは、インタビューに対する回答からエッセンスを抽出することでした。そこで使用したのが、MAXQDAのリボン[分析]タブにある[パラフレーズ]機能です。
図2:MAXQDA 2018を使ってインタビューをパラフレーズする
パラフレーズ・モードでテキストの一部を選択すると、元のテキストにそったパラフレーズを書き込める別ウィンドウが開きます(図2)。元の語りのすぐ隣に表示されますので、分析プロセス中、常に分析の経過を追うことができます。このステップを終えた後にパラフレーズをカテゴリーにわけることも可能でした。それから全てのインタビューで使用するコードを作成でき、これが後に複数インタビューの中から関係性を視覚化することを可能にしました。
ハイレベルの分析にサマリーグリッドを使う
いくつかのパラフレーズが互いに関連しており、一度パラフレーズしただけでは十分でないことにすぐに気づきました。MAXQDAは分析を深める方法の一つとしてサマリーグリッドを提供しています。この機能もリボン[分析]タブから使用できます。このツールにより、同じ内容のパラフレーズを簡単に要約できます。文書とカテゴリーの間をクリックすると、対応するパラフレーズが表示され、ここからまとめ上げていくことができます。
私が実施したのは非構造的インタビューでしたので、さまざまな議論の段階で私の主題が複数のトピックとして浮かび上がってきました。そのためこのツールは極めて高い価値を発揮しました。まずはサマリーグリッドで一つのインタビューを検討しリサーチ・クエスチョンに答えることができましたが、その上さらにサマリーテーブル機能(MAXQDAの別の機能)を使用して全てのインタビューを対象に関連ある語りを素早くまとめ上げ俯瞰することができました。
分析結果をMAXQDAで視覚化
MAXQDAはカテゴリー間の関係性を見出すためにさまざまなツールを提供します。例えば[コード間関係ブラウザ]は選択した文書内でのコードの重なりを表示します。これによりコード間の有りうる関係性を素早く認識することができます。さらにブラウザに表示されるマトリクスは対話的に使えますので、四角(あるいは丸)をクリックすると、MAXQDAが対応するグループを[検索済セグメント]ウィンドウに表示します。これは、コード間の関係についてすでに想定されている場合に、コードシステムの質を確認する際にも役立ちます(例:あるトピックに関する文献)。
この研究で私は、自分が前もって想定していた相互関係が見出せるのでないかとの希望をもってパラフレーズから作り出したコードを選択しました。最終的には「仕事に関連の心理状態についての知識」と「仕事に関連した心理状態による失敗」の間に関係を見出しました。言い換えると、これは単なる推定ではなく、対象者たちに現実の仕事と生活の中で実際に起きていることだと言えます。
MAXQDAのマップ機能によってコード間の関係、具体的にはコードのクラスターを視覚化できました。インタビュー内でコードが共起する頻度を計算し、テーブルを作成します。データを見失わずにいることは難しいので、コード間の関係を、最も高い頻度で起きている共起とともに視覚化することを選択しました。これらの結果を分析の中での名義的アプローチに使用でき、とても便利でした。
結論
データ分析を通じ、インタビュー対象者たちがこのトピックに対して基本的には肯定的態度であることを突き止めました。しかしながら、仕事関連の心理状態に対し既に適用されている予防策によって、そしてレジリエンスを高める取り組みは事後ではなく事前に実施されるべきであるという事実によって、実際の行動は・・限定的であると言えます。
それでもなお、日々のルーティン・ワークにおける燃え尽きと抑うつに対し企業はますます関心を高めており、実際のケースに対応していくこが、他の従業員の不必要な苦しみを避ける助けとなるでしょう。マネージャたちの一部はレジリエンス強化における自分たちの役割の重要性に気づいています。しかしながら、すでに確立された研修やプログラム、イベントだけでなく、レジリエンスを高めるリーダーシップ・スタイルにより一層注力する必要があります。
職場において精神的な問題が頻繁に発生するようになるということは、アクションの必要性を意味します。それは生産性を向上し欠勤を減らすためだけでなく、動機づけのためでもあります。アクションをとることは最初に述べたように職場の健康推進だけでなく、職場における従業員の健康リソースを積極的に強化していくことに繋がります。
ドイツの労働環境にはまだ改善の余地があります。すでにとられている最初のステップと、リーダーたちが彼らのアプローチを変える動機づけによって、ドイツのビジネスをより健康な未来へと導く基礎が築かれるでしょう。これには時間と、そしてこの旅の終わりには良い結果が待っていると信じることが必要です。
- この投稿は掲載元と著者の許可を得て、MAXQDA Research Blogより日本語訳したものです。
- 詳細は原文Analyzing the Motivation of Leaders to Promote the Resilience of their Employees with MAXQDA 2018を確認いただくことをお勧めします。
About Author
Maximilian Sprößig is a current diploma student of the Technical University Dresden, Germany. He is interested in human resources development and focuses his research on the promotion of resilience in the workplace. During his studies, he conducted several research projects and his thesis with MAXQDA.