新任小学校教師の経験過程

—1年間の継時的インタビューを通して—

教育心理学研究 2014 年 62 巻 4 号 p. 305-321
著者:曽山 いづみ

キーワード: 新任小学校教師, 継時的調査, 経験, 主体性

抄録

本研究は新任小学校教師9名を対象に1年間計4回の継時的インタビューを行い、新任教師の経験過程を明らかにした。1学期、夏休み、2学期、3学期末以降のインタビュー時期別に、1: 子どもへの理解とかかわり方、2: 先生としての自分のあり方、3: 1、2を促進する要因、阻害する要因、について分析を行った。新任教師は【わからなさ/難しさに直面する】【子どもの色々な姿を見る】ことを通して徐々に【自分なりの感覚をつかむ】ことができるようになっていた。一方で【先生としてのあり方に悩む】ことと【自分らしいあり方が明確になる】ことを揺れ動きながら、教師としてのアイデンティティを模索、形成していた。担任クラスでの困難が大きく、かつ周囲のサポートが得られにくいときには【担任としての責任の範囲】に深く悩むことが示唆された。発達過程を阻害する要因として、1学期時はリアリティ・ショックや環境への適応が強くあったが、徐々にその影響は小さくなっていた。同僚教師や保護者との関係は, 阻害/促進どちらの要因にもなり得、状況文脈によってその影響は大きく変わること、新任教師にとっては主体性の発揮が大きなテーマであることが示唆された。

掲載元:新任小学校教師の経験過程 —1年間の継時的インタビューを通して—

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