質的研究を実施するうえで知っておきたい基本理念
薬学教育 2021 年 5 巻 論文ID: 2020-002
著者:今福 輪太郎
キーワード: パラダイム 帰納的アプローチ 主観性 厚い記述 翻訳可能性
抄録
質的研究の目的は、研究対象となる当事者の視点から見える事象や人々との関わり、その人の心情などの内面的世界を理解することにあり、事実に対する「良い」「悪い」の評価基準は保留することが重要である。医療者教育の分野においても質的研究への関心が高まり、質的研究を「やってみよう」「やってみたい」と思う人が増えてきている。しかしながら、それに比例して、「どんなリサーチ・クエスチョンを立てたらいいのか」「何人からデータを収集すればいいのか」「数値に表しきれない膨大なデータが蓄積されていくだけでこの先どうすればいいのか」「分析手順がわからない」など、質的研究を始めてはみたものの壁にぶつかる人も多くいるだろう。本稿では、質的研究を実施する中でしばしば生じる疑問に答えながら、質的研究の位置づけや目指すものを整理し、その基本理念や方略について考察していく。