スタンダード法社会学
スタンダード法社会学
佐藤岩夫・阿部昌樹 編著
単行本(ソフトカバー)A5 : 320ページ
出版社: 北大路書房
言語: 日本語
978-4762831843
発売日:2022/4/4
書籍内容
法社会学はその学際性ゆえに、理論や方法の彫琢も不断に進行している。本書は、法を広く社会との関わりで考える学際的な学問である「法社会学」の全体像と基礎知識を系統的に示し、今後の発展的な学習の手がかりを与えることをねらいとしているテキスト。その意味で、現時点での法社会学のスタンダードを示したものである。
第一線の執筆陣による文字通り「スタンダード」な法社会学テキスト、誕生!
法社会学の基礎・諸領域・全体像をその講学上の水準をふまえ平明に解説した待望の教科書
(本書帯より)
目次
第Ⅰ部 総論 01講 法社会学の生成と発展 【阿部昌樹】 §1 法社会学という学問の誕生 1 「法」のなかの「社会」への関心 2 「社会」のなかの「法」への関心 §2 法社会学的研究の展開 1 「法」のなかの「社会」の研究 2 「社会」のなかの「法」の研究 §3 法社会学にとっての「法」と「社会」 02講 法社会学における「法」の概念 【佐藤岩夫】 §1 法の概念と法の理論 §2 法社会学における法の概念 1 「生ける法」への注目──E・エールリッヒ 2 規範の妥当を保障する特別の幹部(強制装置)への注目─M・ウェーバー 3 メタ・ルール(二次ルール)の出現への注目─H. L. A.ハート §3 さまざまなタイプの法 1 抑圧的法・自律的法・応答的法(ノネ/セルズニック) 2 形式的法・実質的法(ウェーバー),法の「プロセス化」 3 ハードローとソフトロー §4 社会の「法化」をめぐる理論(法化論) 03講 法社会学における「方法」 【森 大輔】 §1 法社会学における方法論と手法 §2 手法の大きな分類 1 量的研究と質的研究 2 統計的研究と事例研究 §3 量的研究の手法 1 外的妥当性と内的妥当性 2 サーベイ調査 3 実験 4 二次的データの利用 §4 質的研究の手法 1 フィールドワーク/エスノグラフィー/インタビュー 2 ドキュメント分析/学説研究 3 言説分析/会話分析 §5 まとめと発展 第Ⅱ部 紛争と紛争処理 04講 法文化・法意識 【久保秀雄】 §1 研究例の紹介 1 近年の興味深い研究 2 比較 3 訴訟率低下の謎 4 主観的な意識を理解する §2 理解を深める 1 研究の特徴 2 言葉の使い方 3 具体的な使用例 §3 日本での研究成果 1 古典的な研究 2 現在の到達水準 3 さらなる研究の発展に向けて 05講 紛 争 【仁木恒夫】 §1 「紛争」への法社会学の接近の仕方 §2 「紛争」はどのように議論されてきたか 1 紛争の展開モデル 2 紛争と交渉 3 紛争処理 4 紛争と秩序の統合理論 §3 「紛争」をめぐる日本の特徴 §4 「紛争」研究のその他の広がり 06講 法律相談 【山田恵子】 §1 法社会学における「法律相談」の主題化 1 「法律相談」と法社会学 2 「法律相談」という主題の発見と視角 §2 「法律相談」をめぐる法社会学的研究の動向 1 法専門職の「技法」に焦点を合わせたアプローチ 2 法専門職と相談者間の「会話/認知」に焦点を合わせたアプローチ 3 トラブル当事者の「行動」に焦点を合わせたアプローチ §3 「法律相談」をめぐる日本社会の特徴 1 相談機関 2 相談行動の規定要因 §4 「法律相談」研究の展望 1 近年の潮流 2 今後の課題 07講 裁判外紛争解決 【入江秀晃】 §1 「裁判外紛争解決」をどのようにとらえるか §2 「裁判外紛争解決」はどのように議論されてきたか 1 海外における議論 2 日本における議論 §3 「裁判外紛争解決」をめぐる日本(法・社会)の特徴 1 裁判所が行う調停の存在感の大きさ/民間の小ささ/仲裁の小ささ 2 調停手続品質管理に関する規律の弱さ 3 弁護士の職域問題(非弁問題)に関する見通しの悪さ §4 「裁判外紛争解決」研究のこれから 1 司法サービスの民営化か,紛争解決プロセスの多元化か 2 伝統的パターナリズムを脱した新しいリーガル・プロフェッションの展開 第Ⅲ部 司法制度の動態 08講 司法アクセス 【吉岡すずか】 §1 司法アクセスという視点 §2 司法アクセス拡充のための政策 1 司法制度改革と司法アクセス 2 アクセス障害としての情報 3 コストとしての時間・費用 4 弁護士の過疎・偏在 §3 司法アクセスの法社会学的研究 1 供給者側の研究 2 利用者側の研究 §4 司法アクセス論の課題と展望 1 都市部の司法アクセス 2 裁判所利用と司法アクセス 3 支援ネットワークと司法アクセス 09講 裁判による紛争処理 【前田智彦】 §1 裁判による紛争処理をどのようにとらえるか 1 裁判による紛争処理 2 裁判による紛争処理の段階別の問題設定 §2 裁判による紛争処理はどのように議論されてきたか 1 「日本人の法意識」と制度的障壁─裁判利用の多寡とその原因 2 裁判官の判決行動 3 裁判における手続的公正 4 当事者の疎外と本人訴訟 §3 裁判による紛争処理をめぐる日本の特徴 1 低水準の訴訟利用 2 日本で訴訟利用が少ない理由 3 法人利用者による大規模利用 4 裁判による紛争処理の実態:1─和解による終結 5 裁判による紛争処理の実態:2─訴訟の長さ 6 当事者の訴訟に対する期待と評価構造 §4 裁判による紛争処理研究のさらなる課題 1 長期的に取り組むべき問題 2 実証研究の追試と二次分析 10講 現代型訴訟 【大塚 浩】 §1 「現代型訴訟」をどのようにとらえるか §2 「現代型訴訟」はどのように議論されてきたか 1 1970〜1980年代の議論 2 現代型訴訟と法社会学 §3 「現代型訴訟」をめぐる日本の法と社会 1 社会運動としての現代型訴訟 2 現代型訴訟の影響 3 現代型訴訟と社会の変容 11講 違憲審査制 【見平 典】 §1 問題の所在 1 違憲審査制をめぐる日米の状況 2 違憲審査制をめぐる問題 §2 法社会学・司法政治学における議論 1 アメリカの議論 2 日本の議論 §3 日本における違憲審査制の特徴 1 日本司法の消極性の背景 2 日本司法の変化とその背景 §4 違憲審査制研究の今後 第Ⅳ部 逸脱と統制 12講 犯罪と捜査・起訴 【松原英世】 §1 犯罪とは何か §2 犯罪はどのように議論されてきたか §3 捜査・起訴とダイバージョン 1 認知・捜査・起訴 2 ダイバージョンと犯罪の構築 §4 刑法行動の理論 1 犯罪行動の理論と刑法行動の理論 2 犯罪化の社会過程 13講 刑事裁判・裁判員制度・刑事弁護 【佐伯昌彦】 §1 刑事裁判では,何がどのように行われているか §2 刑事裁判をめぐる実証研究の文脈 §3 実証研究に基づく検討 1 裁判員制度導入以前の研究 2 裁判員制度導入の影響 3 刑事弁護 §4 刑事裁判研究のこれから 第Ⅴ部 法の生成 14講 立法過程の現実 【武蔵勝宏】 §1 立法過程の場 §2 立法過程はどのように議論されてきたか §3 立法過程をめぐる日本の特徴 1 政府与党内の立法過程 2 国会内の立法過程 §4 国会の行政監視機能の強化 15講 裁判による法形成 【渡辺千原】 §1 裁判官は法形成をして良いのか,法形成をしているのか §2 法形成はいかに行われうるのか 1 法解釈と法形成 2 法解釈論争の展開 3 法形成の制度的基盤 §3 裁判はどのように法形成をしてきたのか 1 内縁の法的保護 2 利息制限法判決 3 代理出産判決 §4 違憲審査と法形成 §5 ポスト司法制度改革期の裁判による法創造 第Ⅵ部 法の実現 16講 行政法の実施・執行 【平田彩子】 §1 行政による法の実施と行政裁量──基本視座 1 規制法の実施・執行過程の特徴 2 行政裁量の不可避性 §2 執行研究の分析枠組み──4つの分析アプローチ 1 行政側に注目する分析アプローチ 2 行政機関と被規制者の相互作用性に注目するアプローチ 3 被規制者側に注目する分析アプローチ 4 法の執行過程を取り巻く地域住民・市民に注目するアプローチ §3 これから考えるべきこと 17講 行政統制・行政参加 【阿部昌樹】 §1 行政統制の多様性と行政参加 1 行政統制とは何か 2 行政参加とは何か §2 議会による事前統制と裁判所による事後統制の限界 1 法の実質化と行政裁量の増大 2 補完的な行政統制の必要性 §3 補完的な行政統制の仕組みと行政参加 1 補完的な行政統制の仕組みの多様性 2 行政上の決定が「適正」であるということの意味 3 行政上の決定の「適正」性を確保することの難しさ §4 自治体行政への住民参加の進展 1 地方分権の進展と自治体レベルにおける住民参加の制度化 2 何のために住民参加を制度化するのか 3 自治体行政への住民参加の経験的研究 18講 法の実効性 【阿部昌樹】 §1 法の実効性とは何か §2 人はなぜ法に従うのか 1 刑罰の犯罪抑止力 2 非利己的な遵法への動機づけ 3 遵法の程度を規定する要因としての法知識 §3 実効性の意味変容 1 行政活動に関連した法の増加 2 行政活動に関連した法の実効性 3 行政活動に関連した法の実効性についての経験的研究 §4 立法目的の捉え難さと法の実効性研究の課題 1 立法目的の捉え難さ 2 法の実効性研究の課題 第Ⅶ部 法専門職 19講 弁護士と隣接法律職 【石田京子】 §1 「法専門職(リーガル・プロフェッション)」をどのようにとらえるか §2 弁護士はどのように議論されてきたか 1 欧米の職業社会学におけるプロフェッション論 2 弁護士職務のモデル論 3 弁護士を対象とした実証研究 4 弁護士法72条と隣接法律職 §3 弁護士および隣接法律職の特徴 1 司法制度改革後の法専門職制度 2 近年の弁護士研究 §4 弁護士研究の展望 20講 検察官 【飯 考行】 §1 「検察官」をどのようにとらえるか §2 「検察官」はどのように議論されてきたか §3 「検察官」をめぐる日本(法・社会)の特徴 1 刑事訴訟手続のデータ 2 検察官制度の改革 §4 「検察官」研究のその他の広がり,考えるべき論点 21講 裁判官と司法行政 【馬場健一】 §1 裁判官のおかれた環境の重要性/問題性 §2 司法官僚制批判 §3 歴史研究,国際比較 §4 政治学的実証研究 1 政治の侍女か官僚統制か 2 出世の条件 §5 裁判官の判断過程分析 §6 まとめと展望 第Ⅷ部 市民社会と法 22講 家 族 【原田綾子】 §1 法社会学は「家族」をどのようにとらえるか §2 国家が描く家族像と家族政策──明治期から戦後へ 1 家族に対する国家の関心 2 明治民法下の家族像 3 戦後家族法下の家族像 §3 戦後家族のリアリティ──「近代小家族」モデルとその現実 1 近代小家族のひろがりと新たな問題 2 多様化・個人化する家族のリアリティに対する政策的対応の遅れ §4 これからの家族と家族政策の展望─家族の個人化をどう受け止めるべきか 1 個人を基盤とする家族政策の必要性 2 国家の持続可能性 3 家族の暴力や紛争への対応 4 家族の民主化 §5 家族に関する研究の今後─法社会学の視点から,そして市民の視点から 23講 コミュニティ/コモンズ 【高村学人】 §1 コミュニティ/コモンズをどのようにとらえるか §2 コミュニティ/コモンズはどのように議論されてきたか 1 入会林野問題の起源 2 生ける法研究としての入会調査 3 所有権への問い 4 入会林野近代化法とコモンズ論 §3 入会林野のその後から考えるコミュニティ/コモンズ 1 過剰利用問題から過少利用問題へ 2 法化に伴う登記名義の影響力の検証 3 アンチ・コモンズの悲劇へ §4 コミュニティ/コモンズを広げて考えるには 24講 市場・企業 【飯田 高】 §1 「市場」と「企業」をどのようにとらえるか §2 「市場」と「企業」はどのように議論されてきたか 1 「市場」の法社会学 2 「企業」の法社会学 §3 「市場」と「企業」をめぐる日本の特徴 1 日本の市場・企業の特徴 2 市場・企業に対する法の影響 3 法に対する市場・企業の影響 §4 「市場」・「企業」研究のその他の広がり,考えるべき論点 1 法と経済パフォーマンス 2 経済のグローバリゼーション 3 市場とその他の領域 25講 包摂と排除 【長谷川貴陽史】 §1 包摂と排除とは何か 1 政治的次元における議論 2 学術的次元における議論 §2 包摂と排除との中間段階および交錯 §3 日本における社会的排除と法的対応 1 ホームレスの排除 2 障害者の排除 第Ⅸ部 社会変動と法 26講 ガバナンス 【佐藤岩夫】 §1 近年のガバナンス論の広がり §2 ガバナンスとは何か 1 ガバナンスという言葉の沿革 2 ガバナンスの概念 §3 組織構造から見たガバナンスの類型──階層構造・市場・ネットワーク §4 現代日本のガバナンス論の諸相 1 ローカル・ガバナンス 2 コーポレート・ガバナンス 3 国の統治機構改革(政治・行政・司法制度の改革) 27講 少子高齢化社会 【山口 絢】 §1 少子高齢化とはどのような現象か §2 少子化社会における法政策と課題 1 人口減少により生じる法的課題 2 少子化対策の政策とその実効性 §3 高齢化社会における法政策と課題 1 高齢者虐待 2 成年後見制度をめぐる議論 3 高齢者法の誕生と発展 4 高齢者の法的ニーズと司法ソーシャルワーク §4 おわりに 28講 ジェンダー/セクシュアリティ 【南野佳代】 §1 なぜジェンダーが問題になるのか §2 ジェンダーとセクシュアリティ 1 ジェンダーとセックス 2 ジェンダーとセクシュアリティ §3 フェミニズム法学の展開と社会変動 1 フェミニズムとジェンダー 2 公私二元論と近代家族 3 社会変動の文脈に置いてみる §4 日本の社会とジェンダー 29講 グローバリゼーション 【尾﨑一郎】 §1 グローバリゼーションとは何か,なぜ問題か §2 グローバリゼーションに伴う法的課題 1 人の移動に伴う問題 2 財の移動に伴う問題 3 情報の移動に伴う問題 §3 国家法の限界とグローバル・ガバナンス 1 国家/国内法の比重低下 2 国際法の多元化・断片化 3 トランスナショナル法の構想 4 自生的秩序/自律的レジーム §4 多文化主義/グローバル・ジャスティス/法のクレオール 30講 外から見た日本の法と社会 【佐藤岩夫】 §1 日本の「常識」を疑う §2 日本人は裁判嫌いか?──文化・制度・合理的選択 §3 戦後日本の社会変動と法,日本型行政モデル §4 日本の裁判所の活動と組織 §5 むすび