質的社会調査のジレンマ
ハーバート・ブルーマーとシカゴ社会学の伝統
著者:Martyn Hammersley (著) 谷川 嘉浩 (翻訳)
出版社: 勁草書房
言語: 日本語
発売日: 2022/3/19
上巻: 240ページ
ISBN: 978-4-326-19982-2
下巻: 208ページ
ISBN: 978-4-326-19983-9
書籍内容
アメリカ社会学が生み出し普及させた量的方法と質的方法の対立を解きほぐす。社会と科学の性質に迫る社会調査方法論の記念碑的研究。
量的方法と質的方法の区別は、実態に合わないとされながらも確かに存在している。ハマーズリーは、統計が主流化する社会学の中で質的方法を擁護したハーバート・ブルーマーを軸に、この対立の成り立ちや編成を解きほぐす。この議論は、社会や科学の性質をめぐる問いだけでなく、調査や社会学をめぐる根源的な問いにつながっていく。
「主観的な人間経験の科学」は可能か?
プラグマティズム哲学までさかのぼり、ブルーマー理論を徹底的に再構築する、質的調査の系譜学
―― 岸 政彦 (本書帯より)
【原著】Martyn Hammersley, The Dilemma of Qualitative Method: Herbert Blumer and the Chicago Tradition (Routledge, 1989)
目次
〔上巻〕
謝 辞
導 入 なぜいまハーバート・ブルーマーなのか
第一章 一九世紀の哲学と人間科学
実証主義
歴史主義
新カント主義
世紀転換期の社会科学
結 論
第二章 プラグマティズム
チャールズ・サンダース・パース
ウィリアム・ジェイムズ
ジョン・デューイ
ジョージ・ハーバート・ミード
チャールズ・ホートン・クーリー
結 論
第三章 シカゴ社会学
ウィリアム・I・トマス:主観的なものと客観的なものの研究
ロバート・パークとシカゴにおける事例研究調査
シカゴ学派の事例研究の実例
ブルーマーの経験的研究
結 論
第四章 事例研究と統計:社会学的実証主義の興隆
社会学的実証主義者の議論
実証主義の批判者たち
結 論
第五章 流れに抗して:ブルーマーの量的方法批判
統計的方法
社会的事象の量的測定
ブルーマーによる批判の基底にあるいくつかの想定
結 論
〔下巻〕
第六章 ブルーマーの科学観
一九二八年の学位論文
『ポーランド農民』評価
結 論
第七章 ブルーマーの選択肢:自然主義的調査
自然主義的調査に関するブルーマーの記述
探 査
精 査
分析的帰納法
グラウンデッドセオリー
パターンモデル
結 論
第八章 自然主義的調査の評価
ブルーマーの説明
自然主義的調査は科学的基準を満たしているか
自然主義的調査はシンボリック相互作用論と整合するのか
分析的帰納法
グラウンデッドセオリー
パターンモデル
何がなされるべきなのか
科学を再定義する
シンボリック相互作用論を再定義する
結 論
訳者解題 イングランドからシカゴ社会学をみる――環大西洋的で分野越境的な方法論研究
文献表
索 引