雇用関係の制度分析 職場を質的に科学する
雇用関係の制度分析
職場を質的に科学する
樋口純平、西村純 編著
単行本(A5) : 306ページ
出版社: ミネルヴァ書房
言語: 日本語
978-4-6230-8861-4
発売予定日:2020/5/14
書籍内容
雇用関係の制度分析のエッセンスは、対象事実の正確な認識と解釈、そしてその記述にある。本書は、雇用制度分析における方法論を開拓すると共に、その射程を拡大してきた石田光男教授の研究の軌跡を踏まえ、その門下生を中心とした執筆陣による論考をもとに編纂された。今後の雇用制度研究の方法と可能性を改めて問いなおす一書。
概念によって事実を説明したかのような調査報告も、流行語を駆使して統計的手法から析出したという研究成果も、本当の労働現場の事実の観察を蓄積しなければ何が真実と分かるのか。事実の蓄積から有意味な諸要素を探り出し、一定の論理でつなぎ合わせる。その構築された認識が眼前にある現象の全体像を矛盾なく説明している。こうした労働研究者としての方法論とは何かを探る。
- 労働の窓口を通して社会を認識するための研究とはなにかを探る。
- 労働関係論が、社会認識の方法論としてきわめて有効なツールであることを検証する。
目次
序 雇用制度の記述をめぐって
第Ⅰ部 雇用関係研究の方法論――職場の認識方法を磨く
第1章 仕事の社会科学――石田光男を読み解く
1 社会科学の目的と方法
2 仕事への執着
3 労使関係論
4 経営規制と仕事論
5 個別化された労使関係
6 疑問と収穫
第2章 労使関係論の革新――自動車工場調査三部作を素材に(中村圭介)
1 労働研究の衰弱
2 労働支出の質と量
3 統制=control
4 労使関係論の革新
5 日本のリーン生産方式
6 GMにおける管理
7 着想と疑問
第3章 質的なアプローチを用いた労働調査の方法――1つの方法論の形成過程でとられる態度に注目して(西村 純)
1 調査の目的
2 調査に対する姿勢
3 認識の方法
4 労働調査の方法:1つの考え方
第4章 仕事論の法的意義――労働契約と私的秩序の関係(寺井基博)
1 職場ルールと法の関係
2 雇用関係を捕捉する方法:労働市場と組織内取引
3 仕事論:雇用関係研究の方法開拓
4 仕事論の法的考察
第Ⅱ部 労使関係――個別化する職場と集団的取引
第5章 労働組合による経営参加の現地点――2つの企業別組合の経営対策の事例から(上田眞士)
1 試論的なガイドライン:「組織の失敗」と集合的な「システム解」
2 事業計画を焦点としたA労組の経営参加
3 B労組の「闘争を起点とした経営参画活動」
4 経営参加と労働組合のガバナンス機能
第6章 公立学校教員の人事考課に基づく賃金制度と労使関係――勤勉手当の改定をめぐる労使交渉(岩月真也)
1 労使交渉への着目
2 労使関係機構の概観
3 労使交渉の経過
4 勤勉手当の算出方法の改定と労使交渉
5 賃金の個別化と労使関係
第Ⅲ部 人事管理――多様化する社員と評価・処遇制度
第7章 人事制度グローバル標準化における能力主義の可能性――トヨタ自動車の事例(樋口純平)
1 職務主義への揺らぎ
2 分析視角:トヨタ自動車への注目
3 成果主義人事改革
4 人事制度グローバル標準化
5 能力主義は存続するのか
第8章 女性活躍推進とワーク・ライフ・バランス――雇用制度への影響(中村艶子)
1 女性の活躍とワーク・ライフ・バランスの推進
2 女性活躍推進の意義
3 女性活躍推進の動向
4 企業にとってのWLB
5 成果と職場の方向性
6 企業変革要因としての女性活躍推進とWLB制度
第9章 非正規雇用の拡大要因と正社員登用の可能性(小野晶子)
1 非正規雇用の拡大と正社員への移行の現状
2 正社員の採用権限のありかと非正規雇用率の関係性
3 正社員登用の可能性:正社員登用のパターンと賃金へのリンク
4 正規と非正規の汽水域の形成へ
第Ⅳ部 経営管理――経営研究と労働研究の合わせ技
第10章 トヨタ2016年経営組織改革の意義(願興寺㬶之)
1 2016年経営組織改革の特徴
2 事業活動のグローバル化に向けた問題意識と経営理念の明示
3 従業員意識改革のプロセス
4 人事制度の改革:年功制から能力成果主義への変革
5 中期経営計画の設定による役割・責任の体系化と考課・評価基準の確立
6 グローバル化を目指す経営管理と人的資源管理システムの発展
7 日本的経営の新たな地平:変革と一貫性
第11章 アメリカ自動車産業における作業組織――制度改革:経営破たん後のGMを中心にして(篠原健一)
1 改革と生産性・品質向上との連関
2 何がどこまで調査され,調査されていないのか
3 GM・A工場における近年の改革傾向
4 課題として残る雇用関係・管理組織
5 改革の枠組み形成とさらなる経過観察の必要性
第12章 中国進出企業の品質管理(齋藤 毅)
1 日本企業の海外における技術移転
2 工場現場での品質管理
3 工場の仕事管理システムからみた品質管理
4 2企業の事例からみた品質管理の特徴
5 日本企業の技術移転の多様性
第13章 アメーバ経営の中国企業への移転可能性と課題(竇 少杰)
1 アメーバ経営は中国企業で実施可能か
2 アメーバ経営とは
3 アメーバ経営の実施条件
4 導入にチャレンジした中国企業の実態
5 日中企業の環境の違い
6 「常識」と「非常識」に翻弄されてはいけない
結 引き継ぐべきもの
索 引