計量テキスト分析を⽤いた葬儀業界誌 The Casket の研究
計量テキスト分析を⽤いた葬儀業界誌 The Casket の研究
―1870 年代から 1890 年代の掲載広告を中⼼に―
A Study of The Casket, a Funeral Journal, Using Quantitative Text Analysis, Focusing on Advertisements from the 1870s to the 1890s
第56回(2022年)アメリカ学会年次大会(6月4日)自由論題報告
報告者: ⿊沢眞⾥⼦(専修⼤学)
分析支援: 笹生智子(MAXQDA Certified Trainer)
掲載元: 専修大学アメリカ研究ゼミナール黒沢研究室 2022年 アメリカ研究学会報告
※ 自由論題報告のフルペーパーと、分析に使用したデータ(MAXQDAプロジェクトファイル)をダウンロードできます。 ダウンロード方法等はリンク先でご確認ください。
報告要旨
本研究の目的は、アメリカでもっとも古い葬儀業界誌の一つ The Casket が刊行された 19 世紀後半の広告を対象に、計量テキスト分析を用いて広告の経時的変化を明らかにすることである。The Casket は、1876 年に創 刊し、その後 The Casket and Sunnyside と名称を変え、1988 年まで刊行された。そのおよそ 110 年間で、葬儀 業界のプロフェッショナル化が推進され、アメリカの巨大葬儀産業を創出するに至った。報告者は、アメリ カ人の死に対するポジティブな態度が葬儀に「革新」をもたらし、それが現代の巨大葬儀産業につながったと考え、その態度が萌芽期の葬儀誌にすでにみられることを先行研究で明らかにした。本研究では、その研究結果を踏まえ、ポジティブな傾向が広告ではどのように現れているか、1,551 件の広告を対象に、発行日、 広告主名、住所、市、州、商品説明画像の有無、を変数とし、計量テキスト分析を用い検証した。 結果、1876 年 5 割以上の広告で使⽤されていた葬儀者を意味する「undertaker」が徐々に割合を下げたこと、⼀⽅ でポジティブな態度形成の鍵となる「funeral director」は 1881 年から出現し始めたこと、1876 年には 42%で 使⽤されていた棺を意味する「coffin」が、1890 年代には⼀割未満と減少したこと、葬儀のプロフェッショナ ル化の鍵である「embalming」は、1876 年には 0 だったものが年を追うごとに増加し、1898 年には 44%と増 加したことが明らかになった。製品カテゴリーの組み合わせでは、1870 年代には Funeral Furnishings; Trimmings & Hardware; Clothing の組み合わせが多く、1880 年になると、異なる製品カテゴリーの組み合わせ が増え、上記の 3 カテゴリーに加え 1880 年には Hearse、1890 年には Embalming を含む組み合わせが増加したことが判明した。