ポルトガル水道セクターのエネルギー効率分析: MAXQDAによるインタビュー分析

MAXQDA Research Blog 翻訳版

Guest post by Bruno Miguel de Jesus Cardoso (Monday, March 22, 2021)

前回の記事では、ポルトガルの水道セクターにおけるエネルギー効率に関する文献調査を行う際に、MAXQDAがどのように役立ったかをご紹介しました。今回は、MAXQDAの機能を使って、どのようにしてインタビューを実施し、研究の中で整理したのか、つまり、テープ起こし、コーディング、分析といった作業を紹介します。また、特に印象的だったMAXQDAの機能や、研究のこの段階で遭遇したいくつかの困難を克服するのに役立った機能についてもご紹介します。

フィールドワークの文脈: インタビューの開始

この種の調査ではインタビューが重要な役割を果たしますが、今回の場合、インタビューには2つの主な目的があります。

  • このセクターのエネルギー効率を阻害する障壁が何であるかを分析し、適切なプロモーションと、それに適した推進方法やインセンティブを決定する。
  • ポルトガルのこのセクターにとって今後数年間の優先事項は何か、そしてその中でエネルギー効率がどのように重要視されているかを理解する。

インタビューの方法には対面式が望ましいと判断しました。それぞれ長所と短所がありますが、インタビュー対象者とインタビュアーの間でより高いレベルの対話が可能であり、また、気づかれない可能性のある様々な情報(例:ボディランゲージ)や、電話などの他の方法では入手が困難な情報を収集したりすることができるからです。とはいえ、パンデミックという社会的状況の中で、これまでとは異なる条件でインタビューを行うことになり、それがインタビューの妨げになることもありました。

インタビューの実施は、各事業者の異なる現実を理解し、それが事業の運営や目的にどのような影響を与えているかを理解する上で、他に類を見ない豊かな経験となりました。また、異なる背景を持ち、様々な職業や人生経験を持つ人々との交流から学ぶこともできました。

図1: コインブラのモンデゴ川

最初のインタビューは、7つの自治体が統合されて誕生した比較的新しい上下水道事業体であるÁguas do Alto Minhoのエンジニアリング・資産管理担当ディレクターです。若いチームではありますが、この分野での豊富な経験を持つこの新会社は、非常に革新的で持続可能な精神をもって、水の損失を半分以下にするなど、いくつかの課題に立ち向かおうとしています。

図2:Águas do Alto Minho社のEngineering and Asset Managementのディレクター、Pedro Cruz氏へのインタビュー

インタビュー分析とMAXQDA: 文字起こしと分析

通常、そして今回も例外ではありませんが、インタビューは、将来の書き起こしや分析を容易にするために、許可を得て録音されます。対話のリズムに合わせて書くことができないことが多いためです。スマートフォンとタブレットは、この作業に大きな助けとなり、他の機器に頼ることなく、将来の処理や分析のためにコンピュータに簡単にエクスポートすることができました。さらに、MAXQDAには、スマートフォンやタブレットのような様々なオーディオやビデオのフォーマットをインポートして、後で書き起こすことができるという利点もあります。

図3: 書き起こしモード(ポルトガル語)

書き起こしの作業は、一般的に思われているよりもはるかに複雑で時間のかかる作業です。(信じてください、対話自体や、私たちが最初に想定するよりもずっと時間がかかります!) だからこそ、私は、この種の研究におけるMAXQDAの優れた機能の一つとして、トランスクリプション・プロセスを支援する機能を考えています。この機能にはプロセス全体を単純化する重要な付加価値があります。

一つの利点は、インタビュー中に通常発生する様々な対話のリズムやユーザーのトランスクリプション能力(これは、しばしば作業上の疲労によって影響を受ける)に合わせて、再生速度を調整できることです。

図4: コントロールパネル(ボリュームと再生速度の設定)

もう一つの利点は、再生が停止するたびに巻き戻しの間隔を調整できることです(図5 – a)。このオプションにより、再生が再開されたときに、どの部分も飛ばして忘れてしまうことなく、プロセスを継続することができます。(信じられないかもしれませんが、常にどこかの小さな部分を聞き逃してしまいがちなのです!)。

[文字起こしの設定]には、プロセスをさらに高速化、簡略化するための[参加者の自動変更](図5 – b)オプションがあります。私の場合、録音には2人の話者(インタビュイーとインタビュアー)しかいなかったので、このオプションは文字起こしを高速化するために非常に重要でした。それぞれの話者の呼称を設定することができ(私はオリジナルの「I:」と「R:」を使用しました)、新しい段落が始まるたびに話者の呼称を自動的に切り替えることができるので、毎回話者名を入力する必要がありません。

図5: 文字起こしの設定(a – 巻き戻し間隔の調整; b – 参加者の自動変更)

最後に、もう一つの利点は、単純かつ直感的にテキストにタイムスタンプを割り当てるられることです。これにより、その部分が何を指しているかを特定できるだけでなく、特定の部分を聞いてコードを割り当てることも可能になります。つまり、これらの機能により、作業の手間と複雑さが大幅に軽減されました。

図5: タイムスタンプの一覧表示

MAXQDAを使うと、データをコード化したり、または、例えば書き起こしをしながらメモを追加したりできます。(インタビューの音声を書き起こしの最中に破壊的なアイデアや結論を思いついた時に、この機能が非常に重要なことがわかります)。

私の場合、MAXQDAのもう一つの機能である[文書概観表示]を後で使用できるように、(研究目標に沿って作成した)コードの明確なカテゴリーごとに異なる色を割り当てました。この機能を使うことで、各インタビューにおける様々なテーマの分布と、それぞれのテーマの次元、頻度、対話における重要性を把握することができました。

例えば、2つの異なるインタビューの文書概観表示を見ることで、エネルギー効率に対する障壁()と推進力/インセンティブ(深緑)についての言及を、インタビュー中に取り上げられた他のテーマと明確に区別することができました。さらに、インタビューの中で2つの異なる状況に気づくことができました。左のインタビュイーは、障壁よりもインセンティブに大きく言及していたが、右のインタビュイーの答えは、障壁に焦点を当てています。同様に、右のインタビューを受けた人は、自分自身の貢献(オレンジ色)に焦点を当てて答えたのに対し、左のインタビューを受けた人は、ポルトガルのセクター(黄色)に焦点を当てながら、自分の貢献にも言及していることが容易にわかりました。

図7: 2つのインタビューの[文書外観表示]

初期の結論と次のステップ

MAXQDAは、インタビュー・スクリプトの開発のため文献レビューに続き、再生速度や巻き戻し間隔の調整等の特別な機能により、時間のかかる書き起こしなどのプロセスを大幅に軽減し作業時間を短縮しました。MAXQDAはさらに、書き起こしを含め他のソフトウェアを使用することなく、直感的な操作によるコーディングと分析など、インタビューを質的に分析し、そこから重要な結論を導き出すことができます。

これまでのところ、上下水道事業者の従業員の証言は、このセクターが社会に果たす重要性を把握するだけでなく、水損失の削減やシステムのレジリエンスの向上など、ポルトガルのこのセクターが今後10年間に直面するであろう課題を検証するのに役立っています。

インタビューの中で挙げられた課題を考慮すると、この分野の効率性と持続可能性の向上にのための変革を続けることの重要性が明らかになります。社会と環境の未来を確かなものにするためには、処理済み排水の再利用や汚泥の価値化など、既存の障害を克服するための革新的、破壊的、持続可能な手段、解決策、戦略によって対処しなければなりません。

最後に、このような重要なセクターが社会の持続的発展の実現を目指す上でのエネルギー効率化における障壁とインセンティブをより詳細に理解することを目的として、次のステップではインタビューの継続とオンラインアンケート実施を予定しています。

図8: モンタレグレのラバガン川流域に浮かぶ太陽光発電所

About the Author

Bruno Miguel de Jesus Cardoso is a recipient of MAXQDA’s #ResearchForChange Grant, and a Ph.D. student in Sustainable Energy Systems at the University of Coimbra, Portugal. His research project titled “Energy consumption in the Portuguese water sector: benchmarking, barriers and driving forces to energy efficiency” is in progress in Lisbon, Porto, and Coimbra, Portugal.

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