MAXQDAによる絵の分析:人間とゾウのインタラクション研究例
MAXQDA Research Blog 翻訳版
Guest post by Medha Nayak (Monday, January 11, 2021)
前回の記事では、フォーカスグループ・ディスカッションを通じて集めた地域住民の声を分析する手順を紹介しました。同じプロジェクトの一環として、私はゾウというテーマで学校の子供たちの声を集めようとしました。この目的のデータ収集には描画法を用い、データ分析にはMAXQDA 2020の助けを借りました。MAXQDA 2020を使用することで、絵を手作業でコーディングして分析するという大変な作業を大幅に軽減することができました。
私は学校の生徒から受け取った絵を、次のようなシンプルな手順で分析し、結果を導き出しました。
1. インポートする
絵をMAXQDA 2020にインポートしました。
2. 整理する
すべてのファイルが[文書システム]ウィンドウに表示されました。子供たちの認識に性別が影響しているかどうかを調べるために、文書システム内の絵を、男子と女子の2つのグループに分けました。また、ファイル名を適切に変更し、固有の識別番号を付けました。
3. コーディング
絵の中にどのようなコードを見つけたいかは決めていませんでしたので、オープン・マインドでさまざまなテーマや物語を探しながら、絵のコーディングを始めました。画像の中からエリアを選び、名前を付けて色分けしていきました。このプロセスを、絵の中の全ての要素を取り出せたと満足できるまで繰り返しました。コードシステムに並んだコードは、調査に明確さと方向性を与えてくれました。コーディングの過程では、合計で5つのコード(テーマ)が生まれました。このブログでは、絵の大部分を占めた「対立の顕在化(manifestations of conflict)」というコードの例を紹介します。
4. メモをつける
絵やコードをじっくり見ながら、頭をよぎった考えや解釈をすべてメモに書き込んでいきました。コードにメモをつけたり、独立したメモを作成したりしました。
5. コード付き画像セグメントを検索する
文書システムから絵を、コードシステムからコードをアクティブ化して、検索済セグメントの概要を把握しました。このプロセスで、絵のすべてがコード化されているかを確認し、必要に応じて調整や修正を行いました。
6. 検索済セグメントをエクスポートする
検索済セグメントをMS Excel形式でエクスポートしました。単純にコードを読むのではなく、画像を並べることでコードを確認し、絵の多様性を評価しました。例えば、「対立の顕在化(manifestations of conflict)」では、ゾウが家を壊したり、水田の作物やその他の植物を食べたりしている画像がいくつかありました。この作業中に、分析している絵の中で、どれだけの空間や領域がコードでカバーされているかを確認することもできます。
7. 分析する
コードシステムは浮かび上がってきたテーマやパターンの概要を示してくれますが、より深い洞察を得るために、他の分析オプションも使用しました。
a) クロス表
[クロス表]を使って、男子と女子の参加者の発言を話し合ったテーマごとに比較しました。「ゾウが作物や植物を破壊する(Elephants destroying crops and vegetation)」が最も多く挙げられ、これには「象が作物を食べる(elephants eat crops)」「バナナを食べる(banana plants)」「サトウキビを食べる(sugarcane plants)」「ヤシの木を食べる(palm trees)」などのサブカテゴリーがありました。5人の参加者が、ゾウがバナナの苗を折る様子を、2人の男子生徒がサトウキビを食べる様子を描いてくれました。女子生徒の方が男子学生よりも農作物の被害を挙げた割合が高かったことがわかります(69.2%)。家屋の破損は13枚の絵に描かれており、そのほとんど(69.2%(9/13*100))が男子生徒によるのものでした。
b) コードマトリックス・ブラウザ
同様に、参加者の性別によるテーマを比較するために、コードマトリックス・ブラウザも使用しました。コードマトリックス・ブラウザは、クロス表と同じ結果を表示しますが、フォーマットが異なります。男子の参加者は6つのテーマを提示したのに対し、女子参加者は4つのテーマしか提示せず、全体的に比較的少ないテーマしか提示していないことが明らかです。取り上げられた対立の顕在化は、農作物や植物の破壊、家屋の破壊、人間の負傷・殺害の3種類でした。作物被害については、図5に示すように、絵から5つのサブカテゴリーが見出されました。
8. コンセプトを描き出す
同じ結果を表現する別の方法として、MAXMaps を使うことができます。図解ツール の MAXMaps を使って、「ゾウによる対立や問題の顕在化」のコンセプト図を作成しました。MAXQDA のコード・サブコード-セグメントモデルを使って、図解を作成しました。さらに、より意味のある表現にするために、想像力と創造力を駆使しました。
調査結果
子どもたちの絵には、人間とゾウの対立の多くの形と、ゾウに対する彼らの弱さが描かれていました。子どもたちの心には、この対立がずっと残っているようです。男子の参加者は女子の参加者に比べて、より多様なアイデアを提示していることがわかりました。本研究で得られた知見は、自然保護活動家は人間と野生動物の対立を緩和するメカニズムを構築するだけでなく、人間と野生動物の対立と自然保護の未来のステークホルダーである子供たちの意識を向上させる必要があることを強く示唆しています。
- この投稿は掲載元と著者の許可を得て、MAXQDA Research Blogより日本語訳したものです。
- 詳細は原文Analysing drawings with MAXQDA: Human-Elephant Interaction Research Exampleを確認いただくことをお勧めします。
About the Author
Medha Nayak is a PhD candidate at National Institute of Science Education and Research-HBNI, Odisha, India, in their School of Humanities and Social Sciences. Her research project is titled “Understanding human and elephant interactions in northern Odisha”.