MAXQDAを使って文献レビューを書く方法

MAXQDA Blog 翻訳版

Thursday, December 21, 2023

教育科学・健康教育分野の論文プロジェクトでMAXQDAを使用し文献レビューを書いた経験

概要

この記事では、私が論文プロジェクトの文献レビューを書くためにMAXQDAをどのように使用したかを説明します。MAXQDAを使用する前に、私はすでに研究分野に関連するデータベース(CINHAL、PubMed、ERICなど)で科学記事を検索し、文献レビューを開始するために関連する記事を収集していました。参考文献の管理にはEndNoteという文献管理ソフトウェアを使用しました。RISファイルが利用可能な場合は、それを直接EndNoteにインポートし、記事のPDFを添付しました。これにより、後でテキストを書く際(例えばWordドキュメント内で)に参考文献を挿入することができました。

記事が増えるにつれて、概念や方法を理解し、それらの間に関連性を見出そうとしました。しかし、すぐに、論文の提案を書くために役立つ多くの情報を見失っていることに気づきました。そこで、文献レビューを書くためにMAXQDAソフトウェアを使うことに決めました。以前MAXQDAを質的分析のために使ったことがありましたが、文献の分析に使用するのは初めてでした。

この記事では、私が気づいたことや、作業を完了するために使用した機能を共有します。

*文中にある機能名は、開発元が提供するMAXQDA Help(英語)の該当箇所にリンクしています

文献レビューの書き方:部分から全体へ
– 意味のある記事コーパスを構築

MAXQDAでは、さまざまな種類のデータ(画像、音声、動画、PDFなど)をインポートして簡単に分析することができます。ほとんどの科学記事は現在PDF形式で利用可能であり、私が扱ったほとんどの記事もそうでした。そのため、PDFドキュメントを直接MAXQDAにインポートすることができました。さらに、MAXQDAでは文献管理データから書誌データをインポートすることも可能であり、その後、混合研究法機能を使い変数に基づいて記事のクロス表分析に利用できます。

記事をPDF形式で直接インポートし、一貫した形式のファイル名を使用することに決めました。以前から記事をEndNoteにインポートしていたので、EndNoteの機能を使って記事を「名前-日付-タイトル」という形式にリネームしました。リネームした後、スクスポートしたPDF文書をMAXQDAにインポートしました。この過程で、自動インポートフォルダを作成できること(環境設定>自動インポート)に気付きました。このフォルダは非常に便利でした。一度フォルダを作成すると、そこに置いたすべての文書が自動的にMAXQDAにインポートされます。これにより、新しい記事をこのフォルダに入れるだけで、記事が自動的にMAXQDAプロジェクトにインポートされ、かなりの時間を節約できました。

資料(主に科学記事)を統合する際、各記事が私の研究においてどのような役割を果たすのかを体系的に考えました。文献レビューで使用する記事なのか、方法論のセクションで使用する記事なのか?この記事は私のコーパスの中でどのような位置づけにあるのか(重要性、質など)?これらの基準に基づいて記事を整理するために、文書システムで文書グループと文書セットを作成しました。文書グループを使用して記事をその役割(文献、方法論)に応じて整理し、文書セットを使用してより具体的な基準(例えば、学問分野、質的または量的研究など)および内容に関連する基準(例えば、患者の関与、経験知識など)に応じて整理しました。

キャプチャ: 文書システムの文書セット

まとめ: この段落では興味のある資料(記事、グレイリテラチャー)をどのようにMAXQDAに統合したかを説明しました。この分析には、収集する資料の種類、その役割、および資料と自分の目標との関係を考慮することが必要でした。

文献レビューの書き方:文書を整理する
– 研究の目的を達成するために、MAXQDA でどうのように構成するか?

すぐに多くの記事を集めることになり、それらを整理して目標に合致させる方法を考える必要がありました。これらの目標には、研究分野の理解、研究のギャップの特定、問題化、および研究質問の形成が含まれます。そこで、このデータをどのように構造化するかを検討しました。記事の固有の構造を把握するために、新しいコードを使用して、従来の読書カードのような形式(要約、目的、方法、結果、議論、結論)を作成することにしました。さらに、記事で使用されている概念と理論のためのコードを追加しました。これらのコードにより、記事のコーパスを迅速に探索し(例えば、要約を読むことで)、優先的に読み進めたりコード化したりする記事を選択できました。

また、文書セットを使用して記事を整理する第二の方法も活用しました。複数の基準(例えば、方法論、内容、分野)に基づいて記事を整理したい場合には、記事を複数のセットに追加できることが特に有用です。具体的には、私の研究分野に寄与するさまざまな学問分野(看護、医科学など)、使用される異なる方法論(質的、量的、混合、文献レビュー)、および主要な関心テーマ(患者の関与、経験的知識など)に対応する文書セットを作成しました。このようにして、特定のテーマや特定の分野の記事を調べたいときに、対応する文書セットをアクティブ化することができました。この作業は、私のコーパス内の記事間の比較(類似点、相違点)を可能にし、その理解を深めるために重要でした。これは、この新しい研究分野に慣れるための重要なステップでした。

MAXQDAの検索機能が研究データの整理に役立つことに気づきしました。特に、テキスト検索&自動コードを使用して記事を素早く探索し(例えば、キーワードを検索して記事をセットに整理する)、コーディングをサポートしました。具体的には、興味のある概念を検索し、セグメントを確認し、その概念の定義に関連する部分をコーディングしました。より効率的に行うために、テキスト検索結果ウィンドウで除外リストを使用し、新しいコードや既存のコードで検索結果を自動コーディングしました。また、メインメニューのログブックやメモを使用して、自分のアイデア、疑問、意見、および作業の進捗を記録しました。最後に、文書への色の割り当ては、既に読んだ記事(例:緑色)とこれから読みたい記事(例:オレンジ色)を区別するのに役立ちました。

キャプチャ: “patient experience”のテキスト検索結果

まとめ: この段落では、私が目標に合った基準に基づいて文書を整理した方法を説明しました。自分のコーパス内の記事を比較するための基準を定義する必要がありました。そのため、方法論、学問分野、テーマなど、さまざまな基準に基づいて記事を整理しました。この分析的な活動は、私自身の考察を伴うものであり、自分に問いかけました:「私の研究分野にとって何が重要ですか?」、「私の興味は何ですか?」など。そしてこれらの考えをメモやログブックに記録しました。

文献レビューの書き方:データの構造と内容を探る
– 私の論文の本質は何か?

探索は質的研究における重要な分析活動です。MAXQDAは、検索ツールやアクティブ化(文書、コード)で、この探索を強力に支援しています。また、メタデータである文書変数を使用してデータ内を検索することもできます。私は、コンテンツと構造の観点からデータの性質を検証しました。コンテンツを探索するために、テキスト検索を使用し、興味のある概念や単語を探しました。また、特定の文書で最も頻出する単語(ワードトレンド)を調べることで、そのテキストの主要な概念やアイデアを把握できました。これはデータの内容やそれに基づくコードを作成するための洞察を提供することができます。また、私は記事をその内部構造(要約、方法、結果、議論、結論)に基づいてコーディングしていたので、この構造を使用してコーパスを探索することもできました。

キャプチャ: 記事Flora(2024)のワードトレンド

まとめ: この段落では、MAXQDAのアクティブ化(文書、コード)、ワードトレンド、およびテキスト検索の機能が、データの内容と構造を探索するのにどのように役立ったかを説明しました。

文献レビューの書き方:注意深く、深く考察する

MAXQDA は、質的研究でにおけるリフレクション活動(要約、質問、収斂など)の多で役立ちます。前述のように、メモとログブックはアイデアや疑問などを追跡するのに役立ちました。また、コード付セグメントから情報を凝縮するためにサマリーグリッドを使いました。このグリッドはコード付セグメントにアクセスして要約することができ、とても実用的です。この作業が完了すると、サマリーエクスプローラですべての要約に簡単にアクセスできるようになりました。このエクスプローラは、統合と執筆を容易にしました。考察は、著者と概念の間の関連を可能にする可視化ツールによってもサポートされる場合があります。たとえば、単一コードモデルを使用して、ある概念に関連するコード付きセグメントのマップを作成するためにMAXMapsを使用しました。このマップを作成するために、文書と興味のあるコードをアクティブ化し、単一事例モデルを選択しました。

データを注意深くかつ詳細に検討することで、文献で十分にカバーされているトピックや、そうでないトピックを特定できます。これは、ニーズに応えるための追加の記事を探す際の指針となります。私の文献の中のテーマのカバレッジを概観するために、コードマトリックスブラウザを使用しました。今回はグループ間の比較を使いませんでしたが、次回は使用する予定です。

キャプチャ: コード付きセグメントを要約するサマリーグリッド

まとめ: この段落では、MAXQDAがデータを注意深くかつ詳細に検討するのにどのように役立ったかを説明しました。メモとログブックを使用して考察を記録し、サマリーグリッドを使ってコード付きセグメントを要約しました。また、視覚化機能を使用して文書とコード(概念)の間の関連をマッピングしました。コードマトリックスを使用して、記事でカバーされている主要なトピックと、あまりカバーされていないトピックを概観することができました。

文献レビューの書き方:問いかける
– 自分は何を知っていて、何を知るべきか?

MAXQDAのツールは、データの詳細な調査や比較、視覚化などに大きな力を発揮します。アクティブ化は興味のある情報に素早くアクセスできる使いやすいツールです。例えば、文献レビューで取り上げられている課題に興味がある場合、私は「課題」のコードと「文献レビュー」の文書セットをアクティブ化します。すると、コード付きセグメントが検索済セグメントウィンドウに表示されました。その後、このウィンドウでそれらを再読することができました。これらのセグメントの要約を作成した後は、サマリーエクスプローラを使って直接作業することもできました。データを調査する際には、疑問や仮説にも注意を払いました。

キャプチャ: 検索済セグメント – 文書セット“Literature review”とコード“Challenges”をアクティブ化

これまでに言及したさまざまな分析活動を容易にすると思われる機能を見つけました。それが、「Question-Themes-Theories(QTT)」です。これを使うことで、私の作業の結果(コード、コード付セグメント、要約、可視化など)を統合し、アイデア(仮説、理論、質問、解釈など)をまとめることができました。

まとめ: この段落では、私のデータ(セグメント、要約)を調査し比較するのに、MAXQDAがどのように役立ったかを説明しました。また、これまでの分析活動に基づいて解釈や仮説を立てるために、QTTを使うことを提案しました。

結論

最後に、私が提示した文献レビューの際に役に立った機能性のリストが、あなたにとっても役立つものであることを期待します。MAXQDA を使った文献レビューの詳細については、Udo Kuckartz と Stefan Rädiker によるガイド(2019 年)も参照してください。

About the Author

Félicia Bielser is a PhD candidate at the Psychology and Educational Sciences department at the University of Geneva, and a research assistant at the University of Applied Sciences and Arts Western, School of Health Sciences, Switzerland. Her thesis focuses on patient engagement in health education, and she is more specifically interested in investigating how patients, teachers and students mobilize patient’s experiential knowledge in their educational activities

 


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