〈フィールドワーク〉小児がん病棟の子どもたち ――医療人類学とナラティヴの視点から

〈フィールドワーク〉小児がん病棟の子どもたち
――医療人類学とナラティヴの視点から

田代 順 著
単行本(ソフトカバー) : 240ページ
出版社: 遠見書房
言語: 日本語
ISBN 978-4-86616-114-3
発売予定日:2021/3/31

書籍内容

子どもたちが最大限幸せに過ごせるように、病棟コミュニティはどのように作られていくのか

本書は、小児がん病棟における患児らの言動・行動を中心に、小児がん病棟世界に関わる人々の語りと行動を記録したフィールドワークをまとめたものである。子ども同士、親、医師、ナースらのやりとりが、どのように小児がん病棟というコミュニティを構成してゆくのか。著者はナース・ステーションを基地として参与観察を行い、子どもらとの遊びとおしゃべり、親や医療者との会話を通して、その成り立ちを明らかにしてゆく。子どもたちが幸せに過ごすために見えてきたものは?
「小児がん病棟の子どもたち」(青弓社,2003)に、新たにナラティヴをキーワードにした考察と、リメンバリング技法を用いた心理的支援(グリーフワーク)の章を加えた新訂増補版。(カバー:奈良美智)

『この本は、小児がん病棟という、がん(この本の場合、血液のがんである白血病児を中心とした)に罹患した子どもら=患児らの言動・行動を中心に、小児がん病棟世界に関わる人々の語りと行動を記録したフィールドワークの記録、すなわち、小児がん病棟についてのエスノグラフィである。
エスノグラフィとして、この本は、患児を軸として、この小児がん病棟に語りと行動でもって不断に病棟世界を構成し続けている人々の様相を描き出すことになる。また、同病の子ども同士とその親(同士)、医師・ナースなどの医療職がさまざまな位相で織りなす病棟での語りに着目する。いわば、「(血液のがんをベースとする)小児がん」の病棟世界を構成する成員によって織りなされる、その「世界」での語り「合い」に深く関心を払う。それは、その語りが、その社会をどのように描き、また、不断に(語りによって)その社会を更新・改訂・編集しつつ、できるだけ秩序だった形で「病棟社会」が成立するように、個々人のナラティヴとその「やり取り」が、それに対してどのように機能するかをも見ていくことにもなる。』
(第0章  新版に際して より)

目次

第0章  新版に際して
第1章  はじまりの語り
第2章  フィールドに向かって
第3章  病棟社会の構成
第4章  自分の病気を知ること/知らないでいること
第5章  終末期、そして子どもの死
第6章  「ふり」をする母親
第7章  タブーを排除すること、あるいは不安と恐怖について
第8章  「社会的な死」を招来しないための関係構造
第9章  ナラティヴ・コミュニティとしての病棟社会―言語と知覚、そして認識、それによる体験の内在化と排除―
第10章  心理的支援への視座―小児がんの病棟社会の「状況・位相」から心理的支援とグリーフワークのありようを考える―
おわりに  断ち切られた者、終わらない歌を歌う

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