ナラティヴ研究 語りの共同生成
やまだようこ著作集 第5巻
ナラティヴ研究 語りの共同生成
やまだ ようこ 著
A5版 504頁
出版社: 新曜社
言語: 日本語
ISBN 978-4-7885-17035
発売日:2021/1/22
書籍内容
ナラティヴ、ライフストーリー研究の勘所満載!
もの語りは、生きもの、生もの、生まれるもの。人と人のあいだで共同生成されるもの。
人はお金や権力だけではなかなか動きませんが、ナラティヴ(もの語り)は人びとを感動させ、ときに歴史を動かことさえあります。そのような語りをどのように分析すべきか、まとめたらよいのか、ナラティヴ研究の基礎から研究法、その学び方までを一冊に収載。
目次
はじめに――もの語りは生きもの、生もの、生まれるもの
Ⅰ 人生をもの語る──ナラティヴとライフストーリー
1章 川喜田二郎さんインタビュー─KJ法の原点と核心を語る
1 今西錦司さんとの出会い
2 原点──生きた実践的つかみとり
3 質的方法と野外科学
4 KJ法のはじまり
5 ヒマラヤ研究とモノグラフ
6 インタビューやアクションリサーチにおける「ありのまま」とは何か
7 英語で論文を書くということ
8 図解化の方法
9 他者への説明と衆目評価
10 川喜田二郎さんへのインタビューを終えて
11 KJ法とグラウンデッド・セオリー そしてインタビューにおける語り手と聞き手の関係性
2章 人生をもの語ることの意味──ライフストーリーの心理学
1 ライフストーリー研究とは?
2 ライフストーリー研究の系譜
3 ライフストーリー研究がもたらす新しい視点
3章 質的研究とライフストーリー
1 企画の趣旨
2 話題提供1 質的研究とライフストーリー研究の具体例──「喪失から生成へのライフストーリー」
3 第一回目の対話
4 話題提供2 質的研究とライフストーリー研究の位置づけ
5 第二回目の対話
6 フロアとの対話
Ⅱ ナラティヴ(もの語り)研究の基礎
4章 ナラティヴとは何か
1 ナラティヴとは
2 質的研究とナラティヴ・ターン
3 ナラティヴ研究の源流 (1)「記号論」──実在概念から関係概念へ
4 ナラティヴ研究の源流 (2)「言語行為論」──社会的行為としての言語
5 ナラティヴ研究の源流 (3)「テクスト論」──作品からテクストへ
6 ナラティヴ研究の源流 (4)「物語論」──もの語りとしての科学、歴史、人生
7 ナラティヴ研究の源流 (5)「臨床ナラティヴ」──病いの語りともの語りの書き換え
8 ナラティヴ的人間観と心理学方法論の変革
9 ナラティヴ研究の特徴
10 ナラティヴ研究法──インタビュー法
5章 質的心理学とナラティヴ研究の基礎概念──ナラティヴ・ターンともの語り的自己
1 質的研究とナラティヴ
2 質的心理学とは何か
3 もの語り的自己
4 質的心理学とナラティヴ研究の基礎概念
Ⅲ インタビューの方法
6章 「並ぶ関係」で当事者のもの語りを聴く──看護とナラティヴ
1 医療とナラティヴ
2 一方向関係モデル──伝統的な診断・治療・権威的関係
3 二者関係モデル──対面関係、対話としてのナラティヴ
4 三項関係モデル1──並ぶ関係のコミュニケーション
5 三項関係モデル2──仲人関係のコミュニケーション
6 三項関係モデル3──見守り関係のコミュニケーション
7章 ライフストーリー・インタビューの方法
1 ライフストーリー・インタビューの方法
2 ライフストーリー・インタビューの具体例
8章 インタビューにおける問う技法
1 方法──事例の選択と分析概念の構成
2 分析1 コンサルタント・インタビュー事例のマイクロアナリシス
3 分析2 専門家インタビューにおける拡張質問──失敗例と成功例のマイクロアナリシス
4 まとめ
9章 ナラティヴ・インタビューの問い方 ──村上春樹『1Q84』の会話をもとに
1 村上春樹『1Q84』の会話より
2 ナラティヴ・インタビューにおける質問のしかた
Ⅳ ナラティヴ研究法を学ぶ
10章 ナラティヴ研究の実習
1 質的研究の基礎実習
2 基礎実習で何を教えるのか──京大教育の具体例から
3 協働的学びの場所(トポス)とモデル
4 基礎実習カリキュラム、フィールドワークKYOTO「伝統の継承と生成」
──京都の伝統を育ててきた人びととの対話
5 問題の立て方と研究計画の作成
6 語りテクストの分析──テクストの重層化
7 一次テクストの作成
8 二次、三次テクスト──意味ある語りの選択
9 質的研究法としてのKJ法
10 重層したテクストとの対話
11章 多文化横断ナラティヴ──多声対話と協働の学び
1 多文化横断ナラティヴとは?
2 多声ナラティヴモデル
3 多文化横断多声ナラティヴモデル
Ⅴ ナラティヴとレジリエンス
12章 レジリエンスをはぐくむ「もの語り」の力
1 問いを変えると、ものの見方が変わる
2 レジリエンス──しなやかな復活力
3 経験を組織化する「もの語り」
4 数値からもの語りへ
5 文脈が異なる複数の現実に目を向ける
6 「負」を転換した運送会社
7 スティーブ・ジョブズのもの語り
8 人生の意味を変え、未来を見通す
9 経験談はなぜ強いのか
10 「ない、でも、ある」で、負を転換する
13章 負を転じるナラティヴ──「がんばれ日本」と “I love America”
1 文化的ナラティヴ──負を転換する語り
2 がんばれ日本──「ない、でも、ある」構文
3 「がんばれ日本」の多様な変奏──日本と海外のデザインの共鳴性
4 ガンバレ・コールの共同生成──「がんばって」 「がんばらないで」 「がんばりたい」
5 「自他の重ねあわせ」──あなたががんばっているので、私もがんばります
6 アイ・ラブ・ニューヨーク(I love New York)
7 「がんばる」と「持ちこたえる(hold on)」
14章 喪失を生きるナラティヴ──「千の風になって」
1 はじめに──現代のフォークソング
2 喪失のナラティヴ
3 「千の風になって」はいかに生まれたか─もの語りの構造分析
4 ナラトロジー(物語論)による構造分析
5 ナラティヴの生成的定義
6 ナラティヴ生成法──詩による言語ゲーム
7 対比むすび法──想像ゲームによる思考実験
8 仮定むすび法──喪失から生成へ転回(ターン)する仮定法
9 受動むすび法──「救われる」 「見守られる」 「ありがたい」もの語り
10 なぜ死者は風になるのか─たましいイメージとしての風
15章 喪失と巡礼──宮澤賢治と村上春樹のナラティヴ
1 喪失と巡礼──喪失をかかえると人はなぜ北へ旅立つのか?
2 宮澤賢治の『青森挽歌』と『銀河鉄道の夜』のナラティヴ
3 村上春樹の『ノルウェイの森』と『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』のナラティヴ
4 喪失と巡礼──まとめにかえて
おわりに
引用文献 / 初出一覧 / 索引