質的研究の「質」管理

質的研究の「質」管理

ウヴェ・フリック(著/文)上淵 寿(翻訳)

A5版 224頁
出版社: 新曜社
言語: 日本語
ISBN 978-4-7885-1508-6
発売日: 2017/1/19

書籍内容

高い質を確保するため、どう研究を管理するか
 昨今、研究の資金獲得やポストの確保のために、研究業績の評価が重要となっています。そのための評価基準が求められますが、質的研究は、従来の科学的研究で主流を占める量的研究とは全く異なるため、量的研究の考え方を適用することができません。質的研究の特質を活かし、質を確保するためには、何に留意し、いかに研究を管理すればよいのか。そしてその研究をどのように評価すればよいのか。本書はそれらの問題と解決について丁寧に解説します。どのような質的研究にせよ、参照すべき枠組みを提供する、質的研究者待望の一冊です。

目次

編者から(ウヴェ・フリック)
 「SAGE質的研究キット」の紹介
 質的研究とは何か
 質的研究をどのように行うか
 「SAGE質的研究キット」が扱う範囲
本書について(ウヴェ・フリック)

1章 研究の質にどう取り組むか
 なぜ質的研究の質が問題となるのか
 内的必要と外的挑戦
 質の問題を問う4つのレベル
 問題─質的研究の質を評価する方法
 質的研究の倫理と質
 本書の構成

2章 基準・規準・チェックリスト・ガイドライン
 はじめに
 質的研究とは何であり、何を指しているのか?
 標準化されていない研究の「標準」
 質的研究の問いに答える伝統的な規準か、あるいは新しい規準か?
 伝統的な規準の再定式化
 新しい、方法に適した規準
 ガイドライン、チェックリスト、規準のカテゴリー
 規準を定式化する第三の選択肢としての方略

3章 多様性を管理する方略
 はじめに
 理論的サンプリング
 分析的帰納法
 メンバーや聴衆の合意
 結 論

4章 トライアンギュレーションの概念
 質的研究の歴史におけるトライアンギュレーション
 何がトライアンギュレーションで何がそうでないのか?
 多元的トライアンギュレーション
 議論の流れ
 洗練された厳密性としてのトライアンギュレーション
  ─デンジンの批判への応答
 視点の体系的トライアンギュレーション
 統合的トライアンギュレーション
 問題の構築、知識の生産、結果の保証の間の
  トライアンギュレーション

5章 質的研究における方法論的トライアンギュレーション
 方法内トライアンギュレーション
  ─エピソードインタビューのケース
 方法内トライアンギュレーションを用いた例
 異なる質的研究方法のトライアンギュレーション
 方法間トライアンギュレーションの例
 質の促進の文脈での、質的研究における
  トライアンギュレーション法

6章 エスノグラフィーにおけるトライアンギュレーション
 参与観察からエスノグラフィーへ
 エスノグラフィーにおける暗黙的トライアンギュレーション
  ─ハイブリッドな方法論
 エスノグラフィーにおける明示的トライアンギュレーション
  ─トライアンギュレーションの指針
 エスノグラフィーにおけるトライアンギュレーションの一例
 質的研究の質を管理する文脈での、
  エスノグラフィーにおけるトライアンギュレーション

7章 質的研究と量的研究のトライアンギュレーション
 質的研究と量的研究を結びつけることの意義
 質的デザインと量的デザイン
 質的方法と量的方法を結びつける
 質的データと量的データを結びつける
 質的結果と量的結果を結びつける
 量的研究における質の評価の文脈での、質的研究と量的研究の
  トライアンギュレーション
 質的研究と量的研究のトライアンギュレーションの例
 質的研究の質を管理する文脈における、質的研究と量的研究の
  トライアンギュレーション

8章 質を管理するためにトライアンギュレーションをどう使うか
   ─実践的問題
 アクセスの特別な問題
 デザインとサンプリング
 データの収集と解釈
 質的研究と量的研究を結びつけるレベル
 トライアンギュレーションを使う研究におけるコンピュータ
 トライアンギュレーションを用いた研究のプレゼンテーション
 研究プロセスにおけるトライアンギュレーションの位置
 トライアンギュレーションを用いた研究への質的基準
 結 論

9章 質、創造性、倫理─異なる問いの立て方
 介入としての研究
 倫理的健全性の前提としての研究の適切性
 倫理的適切性の前提としての研究の質
 質的研究における倫理的原則
 質的研究の倫理的ジレンマ
 質と妥当性の議論における倫理的次元

10章 質的研究の質を管理する─プロセスと透明性への注目
 方法とデザインの適用
 質的研究の品質管理
 意思決定過程の結果としての質的研究の質
 透明性、文書化、執筆

訳者あとがき
用語解説
文 献
人名索引
事項索引

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