質的研究のための現象学入門
対人支援の「意味」をわかりたい人へ
質的研究のための現象学入門
対人支援の「意味」をわかりたい人へ
編著:佐久川 肇
著:植田 嘉好子/山本 玲菜
単行本: 158ページ
出版社: 医学書院
言語: 日本語
ISBN:978-4-260-01880-7
発売日: 2013/12/9
書籍内容
支援者のための現象学を解説、質的研究の「質」の飛躍的な向上間違いなし!
医療従事者は広義に言えば支援者である。本書は、現象学を哲学の範疇から開放し、支援者がケアの原点を見つめるためのツールとして解説。本書の解説を理解することにより、質的研究の質を飛躍的に高める。とっつきにくい印象がある現象学を、支援者の目線でゼロから学べる1冊。
『また初版では「解釈学的現象学」については簡単な説明にとどめましたが,実はケアの領域の研究で現象学とされているものは,大半が「解釈学的現象学」です.われわれに求められている現象学を,ケアの領域で,よりよい支援を目指すための研究のツールとして考えるならば,その大半は「解釈学的現象学」という方向を取ることになる流れについても,Part B,第I章の基礎編で新たにゼロ地点からの説明を行ないました.そして同じくPart Bの第II章,「実践編」ではこれに基づく研究の具体的な手順を示し,実際の「語り」を取り上げて,研究論文として完成させるガイドラインとしての解説を試みました.同実践編では,現象学の要〈かなめ〉である「還元」と「遡及的思考」について,ゼロ地点からの説明を試みました.最後に研究の具体例として,現場の看護師と難病患者さんとの交流の「語り」を題材として取り上げて「解釈学的現象学」の一モデルとして提示し,読者の実践研究として論文執筆に結びつけるための解説を試みました.』(第2版に寄せて/はじめに より)
目次
Part A 質的研究のための「現象学入門」
対人支援の「意味」をわかりたい人への研究の手引き
序 現象学的研究方法をわかりやすく学ぶには
1.本書の基本的立場
2.現象学をわかりやすく言えば
3.対人支援(ケア)の真の目標とは「実存的支援」である
4.現象学はクライエントの「生」の意味を解き明かす
5.現象学的研究の課題とは研究者の主観を客観化すること
6.ゼロ地点から考える「原理の学」
7.現象学の基本的原理
8.現象学的研究の目標
9.解釈学的現象学とは
まとめ
I 学問の原理とは-ゼロから始めよう
1.研究とは「研究者の主観」を客観化すること
2.現象学は「クライエントの個別的体験」を研究する
3.対人支援における研究の2方向
4.科学と現象学
II 「支援」から見た科学と現象学
1.支援の4段階のモデル
2.「生活モデル」の真の目標とは
3.支援の視点から見た実存哲学と現象学
4.支援における現象学の導入
5.現象学的研究の主要テーマ
III 支援の研究に必要な「実存」の理解とは
A 実存理解の前置き-疾病・障害の本質が隠蔽される背景と支援の本質とは
1.疾病・障害の本質とは「薄められて到来した死の脅威」のこと
2.医療における「死の隠蔽」の構造
3.支援(ケア)の究極には「治らない人」と「死に逝く人」への支援がある
B 「実存」と「実存状況」
1.実存とは「現実存在」のこと
2.「実存」は「実存状況」を通してしか見ることはできない
C クライエントを理解するための実存の特性
1.自己実現を目指す強さとしての実存
2.孤独の極に置かれた弱さとしての実存-強さとしての実存の破綻
D 「実存的支援」とは
1.「かけがえのない他者としてのクライエント」の発見と
「支援者の実存の覚醒」
2.実存的支援の本質とは支援者が「実存としての自らを差し出す」こと
3.「リカバリーの本質」から「支援の本質」を考える
-励ましとしての実存的支援
E 実存的支援の辺縁
1.「実存的支援」と「受容」「傾聴」「共感」の関係
2.スピリチュアルケアと実存的支援の違い
IV 「支援」(ケア)における現象学的研究の基本
A ケアの現象学の大枠
1.「支援の研究」の出発点とは
2.現象学的研究のあらまし
3.現象学的研究の2つの課題
4.「語り」などによって表わされるクライエントの「固有の体験」とは
5.「自然的態度」とは
6.「判断保留」とは
7.「本質観取」とは
B 実践研究における「還元」の手順
1.ケアの現象学では「還元」は「解釈」に近づく
2.なぜ「還元」(本質観取)が可能になるのか
3.解釈学的現象学への発展
まとめ
V 現象学的研究の実践-現象学的方法をどのように修得するか
はじめに
1.最も簡単な還元の例
2.女子学生に見る「還元」の手順
-「客観的事実」から「客観的意味」を取り出す
3.中高生における対人支援ボランティア体験の現象学的解明
VI 現象学的研究に対する批判
1.批判に対して「客観」を現象学的に考えると
2.客観の本質とは
3.初版の読者から寄せられた批判
Part B 解釈学的現象学をわかりやすく学ぶ
I 解釈学的現象学の原理
A 解釈学的現象学の前置き
はじめに
1.「理解」の3段階
2.理解したことを明らかにする解釈学的現象学の目標
3.解釈学的現象学の対象と目標
B 解釈学的現象学のあらまし
1.全体像は「当たり前のこと」としてあらかじめ与えられる
-自然的態度による理解
2.解釈とは「当たり前のこと」の理解を深めること
-「ケアの現象学」は必然的に解釈学的性格をもつ
3.「解釈」は「説明」を超えなければならない
C 解釈学的現象学の骨組みと性格
1.解釈学的現象学の骨組み
2.対人支援の現象学は必然的に解釈学という性格をもつ
II 解釈学的現象学の研究の実践
本章の概要
A 語りを対象とする解釈学的現象学の研究方法の基本的な特徴
はじめに
1.語る意味とは-「語ること」の本質とは
2.聴き手の課題-何のために「語り」を聴くのか
3.「語り」を理解するための手掛かりとしての遡及的考察の出発点
B 客観から実存への遡及の原理
1.「客観」から「実存」への遡及とは
2.「What?」とは「人間とは何か」についての答えの一つ
3.遡及的考察の手掛かりは語りの内容についての
「よい」,「よくない」の理由を追求していくこと
C 研究実践の骨組みと手順
はじめに-遡及的考察とは「事実」から「意味」へ
1.「語り」を対象とする解釈学的現象学の骨組みとは
2.解釈学的現象学の手順
3.解釈学的現象学の「原理」と「骨組み」および「手順」のまとめ
D 手順に基づく研究実践の具体例
悪性リンパ腫患者との関わりについての看護師による語り
手順1:①-1 テクストとして逐語録化された「語り」(事実としてのHow①に相当)
手順2:①-2 逐語録のコンテクスト化(事実としてのHow②)
手順3:②,③,④ 語り手の「客観的全体像」と「一般的(客観的)意味」の把握
手順4:⑤,⑥,⑦ 手順5:⑧ 実存的意味のWhyへの遡及=現象学的解釈
まとめ
Part A・B 引用・参考文献
Part C のぞいてみよう! 質的研究
現象学の位置づけとその意味
1.質的研究とは何か
1)研究方法を選ぶ前に
2)質的研究とは何か
3)手段から見る質的研究-「言葉」を用いる
4)「言葉」とは何か-文字から意味へ
5)目的からみる質的研究-よりよい支援をめざす
6)「質的研究」全体の特徴
2.代表的な質的研究方法の紹介
1)グラウンデッド・セオリー・アプローチ(Grounded Theory Approach:GTA)
2)エスノグラフィ(Ethnography)
3)ライフストーリー法(The Life Story Interview)
4)ナラティヴ・アプローチ(Narrative Approach)
3.質的研究法の関係図式
1)質的研究法の基本姿勢
2)各方法論の関係
3)現象学的研究はどこに位置づけられるか
Part C 関連文献
質的研究全般に関する文献
Part C-2.代表的な質的研究方法の紹介での引用・参考文献
あとがき
索引